重症好酸球性喘息に対するベンラリズマブの効果:鼻茸あり、鼻茸なしの慢性副鼻腔炎で比較

2024.09.22

イントロダクション

喘息には様々なタイプがあり、重症好酸球性喘息は好酸球が原因で起こる肺の炎症性疾患です。この疾患を抱える患者さんは、通常の治療を受けていても喘息発作や呼吸機能の低下に苦しむことが多いです。本記事では、ベンラリズマブという生物学的製剤による治療効果を評価したANANKE試験の結果の一部をわかりやすく紹介します。

研究の背景と目的

重症好酸球性喘息では、通常の治療では十分に喘息症状が管理できないことがあります。ベンラリズマブ(ファセンラ®)は、このような患者に効果があることが知られていますが、その長期的な効果や異なる患者グループへの影響については、さらなる研究が必要です。ANANKE試験は、イタリアの18施設で実施され、重症好酸球性喘息患者さんにおけるベンラリズマブの効果を評価し、喘息の発作頻度や肺機能、全体的な症状コントロールに及ぼす影響を調査しました。

研究の方法

ANANKE試験では、2019年から2021年にかけて、ベンラリズマブを処方された重症好酸球性喘息患者さんを対象に、平均10.3ヶ月から最長2年間にわたり治療効果を観察しました。患者は以下の2つのグループに分けられました:

  1. 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎と鼻茸を伴わない慢性副鼻腔炎
  2. ベンラリズマブ以前に他の生物学的製剤を使用していたかどうか

結果

ベンラリズマブ治療を受けた患者は、喘息発作の頻度がほぼ完全に抑制され、肺機能が向上しました。また、経口ステロイド薬の使用量が減少し、血中好酸球数が大幅に低下しました。鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の有無、生物学的製剤の経験の有無に関わらず、全てのグループで同様の効果が確認されました。

考察

ANANKE試験の結果、ベンラリズマブは重症好酸球性喘息の長期的な管理に非常に有効であり、2年間の治療においてもその効果が持続することが明らかになりました。この研究は鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎や過去の治療歴に関係なく、ベンラリズマブが重症喘息患者にとって有効な治療選択肢であることを示しています。

おわりに

現在、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に使用可能な生物学的製剤はデュピクセント®とヌーカラ®の2剤で、ファセンラ®は喘息のみの適応です。今後、ファセンラが鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎にどれだけ効果があったかが明らかになってくると、適応が通ると考えられます。上気道と下気道の疾患管理に役立つ治療法が増えることは、患者さんの症状を良くし、生活の質を向上させる可能性が高ります。

当院では、耳鼻咽喉科医と呼吸器内科医で慢性副鼻腔炎と喘息を同時に診療と治療を行っています。喘息と鼻水、鼻づまりが治らない、嗅覚にお困りの方など、ぜひ当院にご相談ください。

診療予約はこちら
instagram x
24時間
WEB予約
お電話はこちら