「後鼻神経切断術」はなぜ注目されているのか?―アレルギー性鼻炎に対する日本の最新手術動向

2025.05.19

研究の背景

近年、アレルギー性鼻炎の患者数は国内外で増加傾向にあり、特に若年層での有病率上昇が報告されています。日本人のおよそ半分が罹患しており国民病ともいわれています。主な症状であるくしゃみ、鼻水、鼻づまりは日常生活に支障をきたすだけでなく、睡眠障害や日中の集中力低下を招き、学業や仕事の生産性にも悪影響を及ぼします。こうした背景から、より効果的で持続的な治療法の確立が求められています。アレルギー性鼻炎(特に通年性)に対して、薬物治療では効果が不十分なケースが少なくありません。こうした難治性アレルギー性鼻炎に対し、後鼻神経切断術が有効な選択肢となることがあります。本研究では、日本全国の手術傾向と耳鼻咽喉科医の手術選好を分析し、「どのような手術が、どの年齢層に、どれくらい行われているか」を明らかにしました。

研究の方法

  • 厚生労働省「レセプト全国データベース」を用い、2014〜2021年の経鼻腔的翼突管神経切除術(後鼻神経切断術や翼突管神経切断術など)の件数を解析
  • 日本鼻科学会会員および研修施設の耳鼻咽喉科医へのアンケート調査を併用し、実際の術式や麻酔法、小児への対応方針などを調査

結果

後鼻神経切断術の件数は年々増加傾向にあり、特に外来手術が増加(2015年:28.2%→2021年:39.0%)
✅ 最も多く行われていた年齢層は25〜29歳で、小児や高齢者ではやや慎重に行われていた
✅ 術式としては、後鼻神経の末梢枝切断術が58.2%で最多
✅ 小児への実施に慎重な姿勢が目立ち、医師の51.2%が18歳未満には不適と回答
✅ 高齢者では術後の乾燥性鼻炎やEmpty Nose Syndromeの懸念から、件数が減少傾向

「後鼻神経切断術」とは

  • 後鼻神経は、鼻の中に分布するくしゃみ・鼻水などのアレルギー反応に関与する神経です
  • これを切除することで、鼻水やくしゃみなどの症状を抑えることができます
  • 過去には「翼突管神経切断術」も行われていましたが、涙が出なくなる・上あごのしびれなどの副作用から現在はあまり推奨されていません
  • 現在は、より安全で最小限の侵襲で行える「後鼻神経末梢枝切除」が主流です

当院の取り組み

当院でも、難治性のアレルギー性鼻炎に対して全身麻酔下での内視鏡を用いて後鼻神経切断術(末梢枝)を実施しています。
✅ 症状が強く、薬の効果が不十分な患者さんには有力な選択肢
✅ 小児や高齢者への手術は慎重に、個別に適応を判断
✅ 下鼻甲介手術との併用
で、より高い効果を期待

「鼻水が止まらない」「毎年くしゃみが止まらない」とお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。後鼻神経切断術を含めた治療選択肢をわかりやすくご提案します。

引用はこちらから
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39068831/
院長、細矢が筆頭著者の1人として執筆しています

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