鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎のタイプ別に見る生活の質への影響

2025.06.12

イントロダクション

鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎は、長期間にわたり鼻づまりや嗅覚障害などの症状が続く疾患で、患者の生活の質(QOL)を大きく損なうことが知られています。最近では、この疾患を免疫反応のタイプで「タイプ2」と「非タイプ2」に分類することが重要視されています。特に「タイプ2」は好酸球などの炎症細胞が関与し、難治性で再発を繰り返す傾向があります。日本では、その多くが好酸球性副鼻腔炎とされています。

本研究は、手術治療が検討される患者を対象に、タイプ別のQOL(生活の質)を詳細に評価した貴重な報告です。クリニックで鼻副鼻腔の治療を受ける方や手術を検討している方にとって、ご自身の症状や治療方針を見直すヒントになる内容となっています。

研究の背景と目的

これまでの研究では、鼻副鼻腔炎の「表現型」(鼻茸の有無や発症原因など)に注目が集まっていましたが、最近では「エンドタイプ(炎症の種類)」の違いが治療成績に深く関わることが明らかになってきました。

本研究の目的は、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の患者を「タイプ2」と「非タイプ2」に分類し、それぞれの患者が感じている症状の重さや生活の質の違いを明らかにすることです。

研究の方法

2018年から2023年にかけて、ドイツの耳鼻咽喉科専門施設で手術を予定している122名の患者を対象に、前向き観察研究が行われました。

参加者は、ヨーロッパのガイドライン(EPOS/EUFOREA 2023)に基づき、「タイプ2」または「非タイプ2」に分類されました。生活の質は、ドイツ語版SNOT-20という標準化された質問票を使って評価されました。

結果

122名の患者のうち、113名(約93%)がタイプ2に該当しました。
タイプ2の患者では、SNOT-20スコアが有意に悪化しており、特に「嗅覚障害」と「鼻水」が強く現れていました。
一方、「鼻づまり」は両タイプで最も頻度の高い症状でしたが、タイプ間で有意差はありませんでした。
また、「顔の痛みや圧迫感」は年齢が若い患者に多く見られる傾向がありました。

特に嗅覚障害は鼻茸の大きさと強く関連しており、タイプ2の慢性副鼻腔炎では炎症のコントロールが難しいことがうかがえます。

考察

今回の研究により、タイプ2の鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎では、嗅覚障害や鼻水といった症状が強く、生活の質への影響が非常に大きいことが確認されました。これらの患者では、内服治療だけでは十分にコントロールできないことも多く、内視鏡下鼻副鼻腔手術が検討されるケースもあります。当院では、全身麻酔下での手術で、患者さんへの痛みや不安への配慮を行っています。

また、症状だけでなく、炎症のタイプを見極めて治療方針を選ぶことの重要性が再認識されました。
当院では、鼻副鼻腔CTや血中好酸球検査、嗅覚検査などを用いて、慢性副鼻腔炎のタイプを診断したうえで、治療方法を提案しています。

慢性的な鼻づまりや嗅覚障害でお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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