血液中の好酸球数は好酸球性副鼻腔炎のタイプ2炎症重症度を示す重要なマーカー

2024.12.04

イントロダクション

鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎は、タイプ2炎症反応が関与する難治性疾患の一つです。特に重症の好酸球性の慢性副鼻腔炎は治療が困難で、内視鏡下副鼻腔手術後に再発もあります。本研究は、患者の臨床データから得られるマーカーと鼻茸組織におけるタイプ2炎症の関連性を評価しました。

研究の背景と目的

慢性副鼻腔炎におけるタイプ2炎症は、鼻茸の形成や再発リスクに大きな影響を与えます。血液中の好酸球数や炎症性サイトカインのレベルが、この病態の重症度をどの程度反映するかを明らかにすることで、治療方針の改善が期待されます。本研究の目的は、臨床的に利用可能なマーカーが鼻茸組織内のタイプ2炎症の重症度をどのように予測できるかを検討することです。

研究の方法

両側性の慢性副鼻腔炎に対して内視鏡下副鼻腔手術を受けた成人患者150人を対象としました(台湾)。

以下の評価を行いました:

  1. 鼻茸組織中の好酸球数とサイトカイン(IL-5、IL-13)の発現レベルの測定
  2. 血液好酸球数や喘息の有無、喫煙歴など臨床データの記録
  3. 臨床マーカーと組織内炎症指標の相関性を解析

結果

  • 150人中95人(63.3%)が好酸球性の慢性副鼻腔炎と診断されました。
  • 臨床マーカーの中で、血液中の好酸球数が鼻茸におけるタイプ2炎症(好酸球数、IL-5、IL-13)と最も高い相関を示しました。
  • 喘息の併発、非喫煙、篩骨洞/上顎洞比、血液好酸球数は好酸球性の慢性副鼻腔炎の発症を予測する有意な因子でした。

考察

本研究は、血液中の好酸球数が好酸球性の慢性副鼻腔炎におけるタイプ2炎症の重症度を評価する重要な指標であることを示しています。この結果は、日本で行われたJESREC study(好酸球性副鼻腔炎診断基準)において、血液中の好酸球数が疾患診断や重症度評価に重要とされた結果とも一致しています。JESREC studyでは、好酸球性副鼻腔炎が再発リスクの高い疾患として位置付けられており、血液好酸球数の上昇が予後不良と関連することが示されています。

また、本研究では喘息の併発や非喫煙状態が予測因子として特定されており、日本のデータでも類似した関連性が報告されています。これらの知見は、地域や患者背景を超えて、血液中の好酸球数が重要な指標であることを裏付けています。

臨床医にとって、患者の血液好酸球数を基に炎症のタイプを把握し、適切な治療戦略を計画することが、より良い治療成果をもたらす可能性があります。

引用文献はこちらです。Laryngoscope. 2024

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39601113

・鼻茸のメカニズムについては、こちらに解説していますので、ご参照ください。

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