より低侵襲で回復の早い「後鼻神経切断術」:アレルギー性鼻炎治療の新たな選択肢

2025.07.15

イントロダクション

アレルギー性鼻炎は、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみといった症状が長期にわたり持続するつらい病気です。特に「通年性アレルギー性鼻炎」と呼ばれるタイプでは、季節を問わずハウスダストやダニなどへの反応が続き、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。

内服薬や点鼻薬で症状が改善しない重症例に対しては、「後鼻神経切断術」と呼ばれる手術が行われています。これは鼻の中に分布する神経を遮断し、アレルギー反応を根本から抑える治療法で、特に薬が効きにくい方や薬を使いたくない方にとって、有効な選択肢です。

今回ご紹介する論文では、従来よりも手術時間が短く、傷も小さく、回復が早い新しい後鼻神経切断術の方法が報告されましたのでご紹介します(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40435842/)。


研究の背景と目的

これまでの後鼻神経切断術は、手術部位の特定や処置に時間がかかることが課題でした。また、手術後に傷口が治るまで時間を要するケースもありました。そこで中国の研究チームは、術前にコンピューター断層撮影(CT)を用いた詳細な位置確認と、中鼻甲介粘膜を移植して傷の回復を早める方法を組み合わせることで、より安全かつ効果的な術式を確立しようと試みました。

この研究では、新しい手術方法が実際にどのような臨床効果を示すか、従来法と比較して評価しています。


研究の方法

本研究では、中等度から重度の持続性アレルギー性鼻炎と診断された110人の患者を対象に、無作為に2つのグループに分けました。

  • 実験群:術前にCTを用いて後鼻神経の出口である蝶口蓋孔の位置を正確に測定し、術中にその情報を活用。また、手術後には中鼻甲介から粘膜を採取して手術部位に移植し、創傷の治癒を促進。
  • 対照群:従来の手術法を適用(CTによる位置特定や粘膜移植は行わない)。

両群に対しては、手術前と術後6か月後に、視覚的アナログスケール(VAS)と鼻結膜炎生活の質質問票(RQLQ)を用いて症状の変化を評価。また、内視鏡を用いた定期観察により、手術部位の治癒状態も確認しました。


結果

術前の症状スコアには両群で有意な差はなかったものの、術後6か月時点では、実験群・対照群ともに鼻づまり、鼻水、くしゃみ、鼻のかゆみなどの症状が大きく改善していました。特に鼻水や鼻づまりといったアレルギー性鼻炎の主要な症状は、VASスコア上でも明確に軽減が見られました。

さらに、創傷の治癒速度に大きな差が確認されました。

  • 実験群では、粘膜の生着が平均3.5週間で完了。
  • 対照群では、露出した骨の上皮化に平均9週間を要しました。

CTによる術前の測定では、蝶口蓋孔の位置までの平均距離が詳細に記録されており、これにより手術時の切開範囲が縮小され、結果的に手術時間の短縮術後の出血リスクの軽減にもつながったと考えられます。


考察

この研究により、術前CTによる精密な位置決定中鼻甲介粘膜の移植を組み合わせた新しい後鼻神経切除術は、従来法と比較して大きなメリットがあることが示されました。

  • 手術による身体的負担が少なく、回復が早い
  • 症状改善が明確で、生活の質が向上
  • 術後合併症(出血・傷の治癒遅延)を最小限に抑えられる

当院では、薬で改善しないアレルギー性鼻炎や、くしゃみ・鼻水が生活に支障をきたしている患者様に対し、後鼻神経切断術を日帰り手術で提供しています。診断に必要なCTやアレルギー検査も院内で完結でき、患者様に最適な治療法をご提案いたします。

アレルギー性鼻炎の症状でお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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