鼻茸のメカニズム
「鼻茸(はなたけ)がありますね」
「ポリープがあります」
などと、耳鼻咽喉科の外来で言われたことがある方も少なくないと思います。
慢性副鼻腔炎の方は日本で100~200万人いるといわれ、そのうち約50%に鼻茸が合併しています。アメリカやヨーロッパでは慢性副鼻腔炎の有病率が10.9〜12%、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎は4%程度と言われ決して稀な病気ではありません。鼻茸は副鼻腔や鼻腔の粘膜にできるブヨブヨした病変で、鼻ポリープとも呼ばれます。特に好酸球性副鼻腔炎は鼻茸ができやすいです。鼻茸の発生の機序の一説をご紹介します(JACI, 2022)。
- 細菌、真菌、ウィルス感染などにより鼻の粘膜が障害をうけると、炎症が起こりむくみます。
- 炎症が生じると、修復するために工事の足場ができます(凝固系によるフィブリンの網)。
- 通常であれば、炎症の修復後に工事の足場は解体され、元に戻ります(線溶系)。しかし、好酸球性副鼻腔炎では、タイプ2炎症のサイトカイン(IL-4やIL-13)が足場の解体を遅らせ、さらにはたくさんの好酸球が足場をどんどん作るため、足場が血液の蛋白質を包み込み、大きな鼻茸となります。
好酸球性副鼻腔炎の手術後に再発した場合に使用するデュピクセントというお薬は、足場の解体を遅らせていたIL-4、IL-13をブロックします。また、血中の好酸球が鼻茸などの組織に移動するのを防ぐことで鼻茸を縮小させます。