デュピクセントによる嗅覚改善効果:鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の治療

2024.07.03

イントロダクション

耳鼻科医療の進展により、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎患者に対する治療法が進化しています。今回は、最新の研究結果を通じて、デュピクセント(デュピルマブ)の効果について詳しく紹介します。

研究の背景と目的

Rhinologyに2024年7月1日に掲載された論文「Screening olfaction under dupilumab in chronic rhinosinusitis with nasal polyps」では、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎患者患者を対象にデュピクセントの効果を評価しています。この研究は、嗅覚の改善に焦点を当て、デュピクセントが嗅覚にどのような影響を与えるかを検証しました。

研究の方法

この研究には、26名のCRSwNP患者が参加しました。デュピクセントは2週間ごとに皮下注射され、基準値および1、3、6か月後に評価されました。評価には、12項目嗅覚スティックテスト(SST-12)、呼気中一酸化窒素(FeNO)、鼻ポリープスコア(NPS)、およびSino-Nasal Outcome Test(SNOT-22)が使用されました。

結果

デュピクセント投与後、1か月目でFeNO、SNOTスコア、NPSが大幅に減少しました。SST-12スコアは3か月目以降に顕著な改善が見られ、6か月後には81%の患者が正常の嗅覚を達成し、嗅覚障害の割合は9.5%に減少しました。嗅覚とポリープの重症度には有意な負の相関が認められましたが、嗅覚とFeNOやSNOTスコアとの間には有意な相関は見られませんでした。

デュピクセントのメカニズム

デュピクセントは、炎症性サイトカインであるインターロイキン-4(IL-4)およびインターロイキン-13(IL-13)を阻害し、主に線溶系に働くことで鼻茸を溶かします。これにより、慢性副鼻腔炎の病態を改善します。

実臨床での応用

デュピクセントは、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎患者による嗅覚障害を持つ患者様に使用ができる新たな治療法です。日本では、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎のおよそ半数が好酸球性副鼻腔炎にあたります。基本的には、内視鏡下鼻副鼻腔手術を行い、鼻茸が再発、そして鼻づまりや嗅覚障害などの症状が2か月以上改善しない場合に適応となる治療法です。当院では、再発を減らすために、鉗子とマイクロデブリッターを使用して副鼻腔のお部屋を大きくつなげる術式を採用しています。

おわりに

今回の研究は、デュピクセントが鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎患者患者の嗅覚を大幅に改善することを示しています。喘息やアトピー性皮膚炎にも適応のあるデュピクセントは、耳鼻科領域においても新しい治療法として、効果が期待されます。患者の生活の質向上に寄与するため、今後も最新の研究動向を注視していきます。

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