飛行機頭痛の有病率と特徴に関する大規模研究

2024.10.14

イントロダクション

飛行機に乗っている間に頭痛が発生する「飛行機頭痛」は、一部の旅行者にとって旅行を台無しにするほどの不快な経験になります。この頭痛は、特に飛行機が離陸や着陸する際に発生しやすく、気圧の急激な変化がその要因と考えられています。これまでの研究では、飛行機頭痛に関する情報は限られており、主に小規模な症例シリーズから得られたデータが中心でした。しかし、今回の研究は、50,000人の旅行者を対象に、飛行機頭痛の有病率や特徴を調査した初めての大規模な横断研究です。

研究の背景と目的

飛行機頭痛に関するこれまでの研究は、主に少人数の症例や小規模なコホートを対象としたもので、大規模な集団からのデータは不足していました。本研究では、より広範な集団を対象に、飛行機頭痛の有病率やその特徴を明らかにすることを目的としています。また、この研究を通じて、現在の飛行機頭痛の診断基準が臨床現場でどの程度適用可能かも検討されました。

研究の方法

本研究は、ドイツの2つの国際空港で行われた横断研究です。5ヵ月間にわたり、50,000人の旅行者に対し、飛行機に乗っている間に頭痛が発生したかどうかを尋ねました。頭痛があると答えた374人のうち、301人がさらに詳細な面接を受け、頭痛のタイプや持続時間、部位、強度などの情報を収集しました。また、飛行機頭痛の診断基準に基づいて頭痛のタイプを特定し、その有病率を算出しました。

結果

50,000人の旅行者のうち、374人(0.75%)が飛行中に頭痛を経験したと報告し、そのうち301人がさらに面接を受けました。飛行機頭痛の診断基準を満たしたのは101人(0.2%)で、片頭痛と診断されたのは6人、緊張型頭痛と診断されたのは134人でした。年齢や性別による有病率の差は統計的に有意ではありませんでした。飛行機頭痛は、着陸時に最も多く発症し(29.7%)、痛みの強さは10段階で7点以上が42.6%を占めていました。症状の持続時間が30分以内が82.2%である一方で、30分以上続く型も17.8%いました。飛行機頭痛の発症タイミング(79.2%)や持続時間(82.2%)、痛みの部位(73.3%)は現在の診断基準に一致していましたが、痛みの強さと質は診断基準と一致しないケースが多く見られました。飛行機頭痛と同時に嘔気(24.8%)、鼻づまり(9.9%)とほかの症状があることもわかりました。

考察

この研究は、飛行機頭痛の有病率がこれまで報告されていたものよりもかなり低いことを示しています。また、痛みの強さや質に関しては、現在の診断基準に必ずしも当てはまらないケースが多く、診断基準の改善が必要である可能性を示唆しています。さらに、飛行機頭痛の発生率に性別や年齢が大きく関与しないことが確認され、これも新たな知見です。

おわりに

本研究は、飛行機頭痛に関する初の大規模な横断研究であり、これまでの知見を大きく更新する結果を示しました。飛行機に乗る際に頭痛に悩まされる人々にとって、この研究は有益な情報となり、さらに診断基準の改良に向けた今後の研究の道筋を示しています。当院では、飛行機頭痛を引き起こす航空性副鼻腔炎に対して治療を行っています。

引用はこちらから
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35414200/

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