日本の喘息患者におけるメポリズマブの実臨床効果:副鼻腔炎の画像所見の改善
2025.01.31日本からの報告です。メポリズマブの効果を喘息だけでなく、合併する副鼻腔炎に対しても検証しています。副鼻腔炎に関連する部分を中心にまとめました。
イントロダクション
鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎と喘息は、しばしば同時に発症し、相互に影響を及ぼします。特に、好酸球が関与する炎症が強い場合、治療が難しく、手術を受けても再発しやすいのが特徴です。本研究では、喘息治療に使用される生物学的製剤「メポリズマブ」が、副鼻腔炎にも効果をもたらすかを検討しました。この知見は、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の新しい治療選択肢として注目されており、手術後の再発リスクを減らす可能性も示唆しています。
研究の背景と目的
鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎は、副鼻腔内に炎症性のポリープが形成され、鼻づまりや嗅覚障害を引き起こします。特に好酸球性副鼻腔炎と呼ばれるタイプでは、手術をしても再発しやすい傾向があります。喘息を合併している患者では、さらに難治性で、従来の治療法では十分な効果が得られないこともあります。
メポリズマブは、喘息の治療薬として使用されている生物学的製剤で、好酸球を標的とすることで炎症を抑えます。本研究では、メポリズマブが鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の炎症にも有効かどうかを検討し、新たな治療戦略を提案することを目的としました。
研究の方法
- 日本国内の喘息患者を対象とした臨床研究(J-Real-Mepo試験)
- 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎を合併する患者の副鼻腔炎の状態を評価
- メポリズマブ投与前後で以下の項目を比較:
- 副鼻腔炎の画像診断(Lund-Mackayスコア)
- 鼻症状(鼻づまり・後鼻漏・嗅覚障害)の改善
- 喘息症状の変化
結果
- メポリズマブ投与後12週間で副鼻腔炎の画像診断スコアが有意に改善
- 特に篩骨洞(鼻の奥の副鼻腔)での炎症が軽減
- 鼻づまりや嗅覚障害などの症状が改善し、患者の生活の質が向上
- 20名中15名が好酸球性副鼻腔炎と診断され、より顕著な改善が見られた
- 喘息症状の改善と副鼻腔炎の改善が並行して進む傾向が確認された
考察
本研究は、メポリズマブが喘息治療だけでなく、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の治療にも有効である可能性を示しました。特に、好酸球が多いタイプの副鼻腔炎では、手術をしても再発しやすいため、メポリズマブによる炎症のコントロールが手術後の再発リスクを軽減する可能性があります。
また、喘息と副鼻腔炎は密接に関連しており、上気道(鼻・副鼻腔)の炎症を抑えることで、下気道(気管・肺)の炎症も改善することが確認されました。当クリニックのように耳鼻科と呼吸器内科が連携して治療を行う施設では、副鼻腔炎と喘息をトータルで管理できるためより包括的な治療戦略を提供する重要な知見となります。
鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎でお悩みの方、手術を検討している方は、ぜひ当クリニックにご相談ください。最新の知見を活かした治療で、長期的な症状改善を目指します。
引用はこちらからhttps://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39848869/