内視鏡下副鼻腔手術後の篩骨残存がデュピルマブの効果に与える影響

2025.03.01

イントロダクション

鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎は、炎症が強く、手術後も再発しやすい疾患です。デュピルマブ(デュピクセント)は、IL-4/IL-13経路を標的とした生物学的製剤であり、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の治療に有効とされています。しかし、副鼻腔手術後に篩骨の骨片(篩骨板)が残存すると、デュピルマブの効果が低下する可能性 が指摘されています。本研究では、術後に篩骨板を徹底的に除去した場合と残存した場合で、デュピルマブの効果に違いがあるかを検討しました。

研究の背景と目的

内視鏡下副鼻腔手術は、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の治療において重要な役割を果たします。しかし、術後に篩骨の骨片が残存すると、炎症の温床となり、生物学的製剤の効果に影響を与える可能性があります。本研究では、デュピルマブを使用した患者において、術後の篩骨板の残存が治療効果に与える影響を評価 しました。

研究の方法

  • 対象: 2020年8月~2022年3月にデュピルマブ(300mg/2週)を16週間投与された鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎患者66名
  • 評価項目:
    • 一次評価項目: 副鼻腔の炎症を評価するCTスコア
    • 二次評価項目: 鼻茸スコア、T&T嗅覚検査、SNOT-22スコア(症状評価)
  • グループ分け:
    • 篩骨板が残存していない群: 23名
    • 篩骨板が残存している群: 28名

結果

CTスコア(副鼻腔炎の重症度評価)

  • 篩骨板が残存していない群で有意に改善(5±4 vs. 9±4, P=0.004)
  • 篩骨板が残存している群は改善が少なかった

その他の評価項目

  • 鼻茸スコア: 両群で改善、有意差なし(2.6±1.6 vs. 3.3±2.0, P=0.22)
  • T&T嗅覚検査: 有意差なし(3.2±1.8 vs. 3.3±1.4, P=0.78)
  • SNOT-22スコア(症状のQOL評価): 有意差なし(18±11 vs. 24±13, P=0.15)

考察

本研究は、副鼻腔手術後の篩骨板の残存が、デュピルマブの効果に影響を与える可能性 を示唆しています。特に、副鼻腔の炎症の評価となるCTスコアが、篩骨板が完全に除去された患者群で有意に改善 していました。これは、篩骨板が残存していると、炎症の温床が残り、デュピルマブの抗炎症効果が十分に発揮されない可能性 を示唆しています。以上のことから、

篩骨板の徹底的な除去がデュピルマブの効果を高める可能性
特に前篩骨洞の処理が重要であり、手術の精度が治療成績を左右する
手術後の治療戦略を考慮する際、篩骨板の状態を確認することが重要

と考えます。

当クリニックでの治療のご案内

デュピクセント治療前に適切な手術を実施し、最大限の効果を引き出す
ナビゲーションシステムとマイクロデブリッターを使用した内視鏡下鼻副鼻腔手術
副鼻腔炎の再発を防ぐため、前篩骨洞を含めた手術を実施

当クリニックでは、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対して、内視鏡下鼻副鼻腔手術とデュピクセントを組み合わせた最適な治療 を提供しています。手術後の再発が心配な方、デュピクセント治療を検討している方は、ぜひご相談ください。

引用はこちらから

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39984346

診療予約はこちら
instagram x
24時間
WEB予約
お電話はこちら