テゼペルマブ(テゼスパイア)と鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎のNEWエビデンス紹介 ~有効性と安全性について~
2026.02.25イントロダクション
鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎は、強い鼻閉、鼻汁、嗅覚低下などの症状が慢性的に続き、生活の質を大きく損なう疾患です。本邦では、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎のおよそ半分が好酸球性副鼻腔炎に該当すると言われています。従来の治療では十分な効果が得られない患者が多く、再発や手術適応となるケースも少なくありませんでした。
最近では、生物学的製剤がこの難治性の慢性副鼻腔炎治療の選択肢として注目されており、 IL-4/IL-13阻害薬(商品名:デュピクセント)やIL-5阻害薬 (商品名:ヌーカラ)が実臨床で使われていますが、 上皮サイトカインである胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP) を標的にした薬剤の効果はまだ明確ではありませんでした。
テゼペルマブ(商品名:テゼスパイア) はTSLPを標的とする抗体薬として、喘息治療薬として既に承認されていましたが、 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対する有効性と安全性を評価する大規模臨床試験(WAYPOINT試験) が行われました。
また、2026年1月29日には日本でも、既存治療で効果不十分な鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対する適応が承認されました(厚生労働省薬事審議会で承認)。
研究の背景と目的
慢性副鼻腔炎に対する生物学的製剤の効果はこれまでに報告されていますが、
- 鼻茸サイズの縮小
- 鼻閉の改善
- 症状全般の改善
- 手術や全身ステロイド使用の減少
といった包括的な評価を、プラセボと比較した無作為化試験で検証することが必要とされてきました。
本研究の目的は、 重症でコントロールが不十分な鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対して、テゼペルマブ追加投与がどれだけ効果的か、安全であるかを検証することです。
研究の方法
- 対象:症状が明らかで重症と判定された慢性副鼻腔炎患者
- 割り付け:
- テゼペルマブ群203名(手術歴 70.9%)
- プラセボ群 205名(手術歴 71.7%)
- 投与頻度:4週間ごとに1回、52週間継続
- 評価:
- 鼻茸の重症度(総鼻茸スコア)
- 鼻閉の重症度(平均鼻閉スコア)
- 嗅覚低下スコア
- 症状の総合評価(SNOT-22)
- CT画像評価(Lund-Mackayスコア)
- 総症状スコア
- 手術適応と全身ステロイド使用までの期間
(いずれも数値が高いほど症状が強い)
研究の結果
52週間後の比較で、テゼペルマブ群は以下の点でプラセボ群より有意に改善しました。
✔ 鼻茸サイズの縮小
平均差 −2.08(95%信頼区間 −2.40〜−1.76)と大きな改善を示しました。
✔ 鼻閉の軽減
平均差 −1.04(95%信頼区間 −1.21〜−0.87)で改善。
いずれも 統計学的に有意(P<0.001) でした。
✔ その他の改善項目
- 嗅覚低下スコア: −1.01
- SNOT-22総合スコア: −27.44
- Lund-Mackayスコア: −5.70
- 総症状スコア: −6.96
(すべて P<0.001)と、幅広い症状で有意な改善が確認されました。
✔ 手術・経口ステロイド薬の減少
- 鼻茸手術が必要となった患者は テゼペルマブ群 0.5%, プラセボ群 22.0%
- 経口ステロイド薬の使用頻度は テゼペルマブ群 5.2%, プラセボ群 19.3%
(いずれも有意差あり)
これらの結果から、 テゼペルマブは鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の全般的な改善と、手術やステロイドの必要性の大幅な抑制に寄与する ことが示されました。
考察
この試験は、重症で既存の治療効果が不十分な鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎患者に対して、 テゼペルマブ追加投与がプラセボを大きく上回る有効性を示した初めての高質な無作為化試験 です。
これまで、副鼻腔炎治療では内服薬や点鼻薬だけで十分な改善が得られないケースがあり、手術適応となる患者も多く存在しました。しかし、本試験では 手術適応に至る患者が極端に減少した ことが大きな特徴です。
また、長期にわたり使われてきた全身ステロイド使用が大幅に減少したことは、 副作用リスクの低減にも直結する結果 と言えます。副鼻腔炎に伴う全身合併症やステロイド関連の副作用に悩む患者にとって、 テゼペルマブは新たな治療戦略として有力な選択肢になり得ます。
さらに、日本国内でもこの効果を背景に 承認が了承され、臨床使用の準備が整いつつある という事実は、日本の患者さんにとって朗報です。
クリニックからのメッセージ
本試験は、重症で薬物治療の効果が不十分な鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対し、 テゼペルマブが幅広い症状を包括的に改善し、手術や経口ステロイド薬を減らす効果 を示しました。
当院では、慢性副鼻腔炎の重症例や好酸球性副鼻腔炎に対し、嗅覚検査・画像診断・鼻腔機能検査を行い、最適な治療方針を提案しています。薬物療法だけで改善が困難な方や、手術を検討されている方はぜひご相談ください。当院の手術ではマイクロデブリッターを使用した低侵襲な内視鏡下鼻副鼻腔手術を行っています。
