新型コロナ感染症の嗅覚障害に関連する認知機能とMRI所見に関するまとめが報告されました

2024.03.25

2024年に論文誌Diagnosticsに新型コロナ感染症の嗅覚障害に関連する認知機能とMRI所見に関する論文をまとめたレビューが報告されました(Diagnostics. 2024 7;14(4):359)。

嗅覚機能障害は、新型コロナ感染症患者の30%~75%にみられ、女性にやや多いといわれています。嗅覚障害は、無症状の患者の唯一の症状であることが多く、他の症状が現れる前に最も早く現れる症状の一つとして当初より報告されていました。通常、嗅覚障害は感染後3日目頃に生じ、通常4~6週間以内に完全に消失します。しかし、4ヵ月後には27%、21.3%の症例では1年間も嗅覚障害が持続することも報告されています。 嗅覚障害は、飲食の楽しみを奪い、生活の質を著しく低下させ、食行動や社会的行動の変化につながりうる病気です。

新型コロナ感染症に関連する嗅覚障害の多面的な影響を調査するため、MRIの所見や神経認知障害についての概観を提供することを目的とした総説が行われました。

MRIの所見からは、新型コロナ感染症感染者の嗅球における体積異常、信号強度の変化、嗅覚皮質の異常などが指摘されています。これらの異常は、新型コロナ感染症による嗅覚障害の病態に関連している可能性があります。特に、嗅球の体積減少は、嗅覚神経経路の直接的な損傷を示唆しています。

新型コロナ感染症に関連する嗅覚障害は、認知機能の低下や気分障害とも関連していることが報告されています。感染後に回復した患者の約3分の1が、認知障害やBrain fogとよばれる「脳霧」、不眠、頭痛、うつ病、不安、精神的疲労などの神経学的症状を訴えています。これらの症状は、完全な機能回復を妨げることがあります。

治療に関しては、新型コロナ感染症に関連する嗅覚障害の自然な解決が多くの場合に見られますが、嗅覚の喪失が2週間以上続く場合には治療介入が検討されることがあります。嗅覚トレーニングや薬物療法などの治療法がありますが、その有効性については、未だに不確実な部分もあるのが現状です。当クリニックでは、嗅覚外来を行なっており、基準嗅力検査を用いて嗅覚障害の程度を調べることができます。そして、これまでの風邪(ウィルス)感染後の嗅覚障害の治療で効果があることがわかっているお薬や嗅覚トレーニングを中心に治療を行なっています。

鼻とにおいのクリニック池袋 院長

細矢慶

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