慢性副鼻腔炎・嗅覚障害に対する日帰り手術

学会や大学病院で鼻の手術を指導する資格、鼻科手術指導医を持つ手術のスペシャリストである院長が手術を行います。鼻科手術指導医とは、2020年により安全で確実な手術が施行されるよう発足した指導医制度です。過去2年間に鼻科手術を200件以上の実績があることや、鼻科に関する論文が10編以上あることに加えて、匿名による手術のビデオ審査があります。手術のビデオ審査では、暫定指導医2名による採点が行われ、安全な手術操作を行っているか、確実な手術が行われているかが審査されます。2024年4月現在、鼻科手術指導医を有する医師は全国で8名のみです。
当院での鼻の手術は、全身麻酔で手術を行うため、手術中に痛みや不安はありません。経験豊富な麻酔科医師が手術中の全身の様子をモニターで細かくチェックを行います。全身麻酔中は患者様の体の動きがありませんので、手術はより安全に精密な操作が可能になります。
当院では、非常に鮮明な4Kシステムの内視鏡を用いて鼻の中で手術を行います。従来のフルハイビジョンの解像度は約200万画素ですが、4Kシステムでは解像度が約830万画素と約4倍となり、色域が広く色鮮やかに表現されるため、非常に見やすい画質で手術を行うことができます。
さらに当院では、クリニックでは非常に稀なナビゲーションシステムを用いて慢性副鼻腔炎の手術を行っています。当院が採用するメドトロニック社は、20年以上にわたり、耳鼻咽喉科手術用のナビゲーションシステムの開発、改良を行ってきたパイオニアです。車のナビゲーションシステムで車がどこを走っているか運転手に知らせるのと同様に、手術のナビゲーションシステムは手術中にリアルタイムで器械がどこにあるか術者に知らせるため、複雑な副鼻腔の中で道しるべになります。安全に手術を行うには、必須のシステムと考えています。

慢性副鼻腔炎、好酸球性副鼻腔炎に対する手術

副鼻腔は、鼻腔の周囲にある空洞のことで、左右それぞれに前頭洞、篩骨洞、上顎洞、蝶形骨洞の4つに分けられています。副鼻腔炎が3か月以上続く場合を慢性副鼻腔炎(慢性鼻副鼻腔炎)と呼びます。薬物療法で改善しない場合は、手術による治療を行います。

内視鏡下鼻副鼻腔手術(Ⅰ~Ⅳ型)

内視鏡下副鼻腔手術は下記のように副鼻腔の開放する部屋の数に応じてⅠ型からⅤ型に分かれています。

  • 内視鏡下鼻副鼻腔手術Ⅰ型…副鼻腔自然口開窓術
  • 内視鏡下鼻副鼻腔手術Ⅱ型…副鼻腔単洞手術
  • 内視鏡下鼻副鼻腔手術Ⅲ型…選択的(複数)副鼻腔手術
  • 内視鏡下鼻副鼻腔手術Ⅳ型…汎副鼻腔手術
  • 内視鏡下鼻副鼻腔手術Ⅴ型…拡大副鼻腔手術

当院では、内視鏡下副鼻腔手術Ⅰ型からⅣ型の術式を実施しています。
内視鏡下鼻副鼻腔手術では、副鼻腔内の病気の粘膜や溜まった鼻水を取り除き、小さな部屋に分かれている副鼻腔を1つの大きな部屋にリフォームし副鼻腔の換気を改善させます。当院での内視鏡下鼻副鼻腔手術では、特に下記の3つの工夫をしています。

再発を減らす工夫

当院では、副鼻腔の出入り口をできるだけ大きく広げる内視鏡下鼻副鼻腔手術の術式を採用しています。特に前頭洞の出入り口はとても狭いため、その周辺が手術後に再発しやすいことが知られています。当院では、斜めの方向を見ることができる内視鏡を使用することで、前頭洞の出入り口の全体像をしっかりと確認を行います。さらに、ナビゲーションシステムを使用し前頭洞の出入り口を確認し、より安全に副鼻腔の部屋を取り除き可能な限り前頭洞を大きく開放します。

嗅覚を改善させる工夫

特に好酸球性副鼻腔炎では、鼻茸が鼻腔に充満しているため、嗅神経が存在する嗅粘膜まで空気が届きません。手術によって、特に鼻中隔と中鼻甲介の間にある鼻茸をきれいに取り除く必要があります(Am J Rhinol Allergy. 2015)。さらに、上鼻道と中鼻道との交通をつけることで、嗅裂への空気の流量を増加させます(IFAR. 2018)。

術後の出血と痛みを減らすモイストヒーリング

慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎の鼻の手術を終えるときには、血を止めるためと傷を早く治すために鼻に詰め物をします。ガーゼで詰め物をしますと、乾燥して鼻の中の傷とくっついてしまい、ガーゼを抜くときに痛みや出血するだけではなく、副鼻腔に新たに傷ができてしまいます。その上、術後の癒着の原因にもなるため、当院ではガーゼでパッキングは行いません。
当院では、止血効果の高いプラスモイスト、NOVApakやアクアセル®️Agアドバンテージを採用することで、出血を減らします。さらに、これらのパッキング剤は、手術後の鼻洗浄によりゼリー状に変化し、徐々に溶けていくため、ガーゼ抜去の時のような痛みはありません。手術後10から14日目の外来時に副鼻腔内を洗浄し、パッキング剤を取り除きます。ゼリー状のパッキング剤が副鼻腔の傷を覆うことで、創傷治癒を促進させます。バンドエイド® キズパワーパッドなどと同様に湿潤療法「モイストヒーリング」を行うことが重要です。
院長は、内視鏡下鼻副鼻腔手術の創傷治癒に関する研究を行なっております。鹿児島大学と共同で研究を重ね、内視鏡下鼻副鼻腔手術に適したパッキング剤を作成し、特許を取得しました。さらに、2024年には薬事承認、販売に向けてAMED(日本医療研究開発機構)から研究費を獲得しました(主は鹿児島大学)。この新規素材が商品化され患者様の元に届くにはまだまだ時間がかかると思いますが、内視鏡下鼻副鼻腔手術後の患者様のつらさを限りなく減らし、副鼻腔炎が改善するよう開発を進めて参ります。

内視鏡下鼻中隔手術、内視鏡下鼻腔手術

鼻中隔弯曲症や肥厚性鼻炎を伴っている場合には、副鼻腔の換気が不十分になりますので、内視鏡下鼻副鼻腔手術とともに同時に手術を行います。

治療実績

院長が執刀した嗅覚障害がある慢性副鼻腔炎に対する内視鏡下鼻副鼻腔手術の治療成績です(2021年)。嗅覚の改善の程度は、日本鼻科学会嗅覚検査検討委員会による嗅覚判断基準を用いて評価しました。嗅覚障害の改善率は82%でした(n=40, 治癒が72%、軽快が10%)。この改善率は、これまでの報告に比べて10%ほど高い結果となっています(日鼻誌2018, IFAR 2020)。嗅覚障害が改善しなかった症例に関しては、嗅覚障害の罹患期間が長いこと、複数回の手術を受けているという特徴があり、治療を早期開始することおよび初回手術の重要性が明らかになりました。

手術後の経過とケア

手術後1〜2日目に鼻に入れた詰め物の一部を取り除きます。
その後に、ご自身で鼻洗浄1回200mLを1日3回ほどで行っていただくことで、鼻の中の傷が常に濡れた状態になり、傷の回復を高めます。また、鼻の入り口には4分割した綿球をいれることで、鼻の中を保湿し手術後の痛みを減らすことができます(Auris Nasus Larynx. 2019)。術後は、鼻の粘膜が腫れるため鼻づまりがありますが、1週間ほどで徐々に改善していきます。

手術のリスクと合併症

出血

手術後1~2週間程度は少量の出血や鼻洗浄時に血が混ざった鼻水がでますが、徐々に出血量は減少していきます。副鼻腔内には、止血効果の高いプラスモイスト、Novapakなどを挿入し、出血の予防をしています。また、手術中にサージトロンで止血を行うことで、ピンポイントに止血を行い、出血量を減らす工夫をしています。手術後に出血した場合には、凝固止血やスポンジの詰め物で止血を行います。連携先である日本医科大学付属病院、日本医科大学武蔵小杉病院などでのバックアップ体制もありますので、ご安心ください。

疼痛

手術中は全身麻酔での手術のため、痛みは感じません。手術後の痛みを減らすように、手術が終わる前に痛み止めの点滴を行うことや、痛みを感じる前に定時で痛み止めを使用することで痛みを最小限にしています。0点を「全く痛くない」、10点を「考えられる最大の痛み」とした場合、術後の痛みは約2点です。手術2時間後が痛みのピークになることがほとんどです。

発熱

手術後1~2日程度、手術による影響で37~38度程度の発熱を認めます。非常に稀ですが、40度の高熱を認めた場合は、感染を疑い早急に対応致します。

鼻づまり

手術後には鼻の全体に綿やスポンジが入っているため、1~2日は鼻で呼吸することができません。手術1~2日後に詰め物の一部を抜去すると鼻で呼吸ができるようになりますが、手術の影響で鼻の粘膜が腫れているため1週間ほどはすっきりしません。小さくした綿球を鼻の入り口にいれ、マスクをすることで、鼻呼吸を保ちながら鼻腔内を加湿すると、傷の治りが速くなり鼻づまりの期間も短くなります。

手術時間

慢性副鼻腔炎、好酸球性副鼻腔炎に対する手術は副鼻腔への換気を良くするために内視鏡下鼻中隔手術(Ⅰ型)、両側内視鏡下鼻腔手術(Ⅰ型)、両側内視鏡下鼻副鼻腔手術を組み合わせて行い、およそ1時間半の手術です。

手術費用

保険診療による手術です。内視鏡下鼻中隔手術(Ⅰ型)、両側内視鏡下鼻腔手術(Ⅰ型)、両側内視鏡下鼻副鼻腔手術(Ⅲ型もしくはⅣ型を主に実施)を施行し、およそ22万円(3割負担)です。別途に全身麻酔料、処方箋料などがかかります。
(手術費用の保険手数について詳しく知りたい方は「日帰り手術の費用」をご参照ください)

高額療養費制度

高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月で上限額を超えた場合に、その超えた額を支給する制度のことです。年齢や所得に応じて上限額は定められています。手術を行う場合、多くの場合で、高額療養費制度を使用できますのでお問い合わせください。
(詳しく知りたい方は「高額療養費制度」をご参照ください)

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