アレルギー性鼻炎・花粉症

  • #専門とする疾患
  • アレルギー性鼻炎の症状

    • 鼻づまりがひどくて、夜目がさめてしまう
    • 鼻づまりと頭痛があり、仕事や勉強に集中できない
    • 春は鼻水やくしゃみがとまらない
    • 猫を飼っている友人の家にいくと、くしゃみが止まらない

    アレルギー性鼻炎の症状で、もっともつらい症状は何でしょうか?アレルギー性鼻炎をもつ2500人に調査したところ、もっともつらい症状は鼻づまりの方が22%、頭痛と鼻水がのどに垂れる(後鼻漏)の方が14%、鼻水や目のかゆみの方が10%ということがわかりました(Allergy Asthma Proc. 2007)。また、これらの症状睡眠の質や集中力を低下させ、仕事や勉強の捗りに影響を与えることが指摘されています(Expert Rev Pharmacoecon Outcomes Res. 2020)。そのため、アレルギー性鼻炎を適切に診断し、治療によって症状を減らすことは生活の質を上げるために重要なことと考えています。

    アレルギー性鼻炎の疫学

    アレルギー性鼻炎患者は世界的に増加していて、日本の全国調査では、アレルギー性鼻炎全体での有病率は10年で10%ずつ増加し、2019年には49.2%にのぼり、国民病ともいわれています(鼻アレルギー診療ガイドライン2024) 。このような、アレルギー性鼻炎患者の増加の原因としては、都市型の生活環境や密閉度の高い住宅環境が関与しているといわれています。中でも、ダニやハウスダストを原因とする通年性アレルギー性鼻炎の有病率24.5%に比べ、花粉症の有病率が年々増加し42.5%と増加しています。

    アレルギー性の検査と診断

    問診による症状の確認、鼻の所見、血清特異的IgEによる抗原同定検査を行います。

    問診

    どのような症状があるのか、つらい症状が一年中なのか季節限定なのか、日常生活にどのように支障をきたしているか詳しく病状を伺います。さらに持病の有無などについても確認を行います。

    内視鏡検査

    内視鏡を鼻の中に挿入し、鼻腔の状態を観察します。内視鏡は細いため、検査による痛みはほとんどありません。鼻腔の構造や鼻茸などの病変があるかどうかを確認します。長引く花粉症と思っている場合に、ファイバースコープによる内視鏡検査で鼻茸が見つかることも少なくありません。

    副鼻腔CT検査

    鼻腔の構造や副鼻腔の状態の確認を行います。鼻づまりの症状が強い場合には、鼻中隔の弯曲が高度であること、粘膜のヒダである下鼻甲介が非常に厚いこと、中鼻甲介蜂巣という中鼻甲介が大きいことがあります。内視鏡検査で観察することのできない副鼻腔の粘膜の腫脹や膿の貯留があるかなどの状態を把握することができます。内視鏡検査で発見することのできない副鼻腔炎を見つけることができます。

    嗅覚検査

    嗅覚障害のうちおよそ5%がアレルギー性鼻炎によるものと報告されています。基準嗅力検査と静脈性嗅覚検査を行い、嗅覚の状態を評価します。

    鼻腔通気検査

    左右それぞれの鼻づまりの程度を鼻腔の空気抵抗を測定することで、鼻づまりを客観的に評価します。

    血液検査

    採血で血清特異的IgEを調べることで、症状の原因となるアレルゲンを調べます。一年中の鼻症状を引き起こす抗原としてダニ、ハウスダストが有名ですが、昆虫アレルゲン感作を確認することも重要です。なぜなら、昆虫アレルゲンのうち、特に蛾の感作率は、東京で30.7%、栃木26.4%と都心部においても郊外と同等な感作率を示し、通年性の症状につながることが指摘されています(耳鼻免疫アレルギー2020)。花粉症では、スギ、ヒノキが最も多く、他の花粉症がある場合はスギ花粉症を9割の方が合併しています。
    また近年、Local allergic rhinitisという病態が明らかになりました(Am J Rhinol Allergy.2020)。例えば、スギが飛散している時期に鼻水などの症状があるために、スギ花粉症を疑い、採血でスギの血清特異的IgEを調べると陰性となります。しかしながら、鼻の粘膜にスギ抗原をたらすと鼻の粘膜が腫れたり、鼻水・くしゃみなどの反応が生じ、スギ花粉症の症状が出現します。このように採血では反応がないのにも関わらず、局所でアレルギー反応が生じる病態をLocal allergic rhinitisといいます。この病気は、改訂された鼻アレルギー診療ガイドラインの最新版(2024)に掲載されました。

    鼻汁好酸球

    鼻水の中に白血球の1種である好酸球がいるかどうか検査をします。例えば、スギ花粉が飛散している時期に、鼻水などの症状があり、スギ特異的IgEが陽性で鼻水に好酸球があると、スギ花粉症と診断ができます。

    下気道検査

    下気道とは、声帯より下の気管、肺のことをいいます。喘息は下気道の代表的な病気です。アレルギー性鼻炎があると、およそ30%で喘息を合併します。咳がある方はお伝えください。喘息を疑う場合には、下気道の状態を調べるために呼吸機能検査、呼気NO検査、モストグラフを行います。

    アレルギー性鼻炎の治療

    抗原除去と回避

    アレルギー性鼻炎で自然に治るのは10%程度といわれていますので、アレルギー性鼻炎の原因となる抗原の回避と除去は欠かせません。

    薬物療法

    くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状は、鼻の粘膜にいる細胞から放出されるヒスタミン、ロイコトリエンなどの化学伝達物質により引き起こされます。それらを抑える抗ヒスタミン薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、鼻噴霧用ステロイド薬などが使用されます。
    花粉症の場合、花粉の飛散前から、10〜20%の方が症状を発症しますので、症状が出現する前に投薬を開始することで症状の重症化を防ぎます。
    第二世代の抗ヒスタミン薬は、第一世代に比べて眠気などの中枢抑制作用や口が乾くなどの副作用が少ないのが特徴です。連日内服することで、効果が高くなります。眠気の少ない薬、自動車の運転に対して制限のない薬として、デザレックス®、ビラノア®、アレグラ®、ディレグラ®、クラリチン®があります。眠くなりやすいことと、薬の効果が強いことには、関係がありません。
    鼻噴霧用ステロイド薬は、抗炎症作用をもち症状を減らす効果の強い薬です。吸収されてもすぐに分解されるため、全身的副作用が少ないのが特徴です。

    舌下免疫療法

    スギ花粉症やダニにアレルギー反応がある方が対象です。薬物療法では効果が不十分な場合や、使用している薬の量を減らしたい場合に行います。治療は3年続ける必要があります。現在、スギに対する舌下免疫療法を新たに開始するための薬剤が全国的に不足しています。

    生物学的製剤

    スギ花粉症の症状がとても重く、抗ヒスタミン薬や鼻噴霧用ステロイド薬を使用しても症状の強い方を対象とした皮下注射による治療で、2019年に保険適用として承認されました。ゾレア®(オマリズマブ)という生物学的製剤がIgEと結合することで、ヒスタミンを放出するマスト細胞にスイッチを入れることをブロックします。そのため、体重と血清総IgE濃度を測定し、どのくらいのゾレア®が必要となるか計算を行います。血清総IgE濃度が30~150IU/mLである必要があります。また、当院では12歳以上を対象としています。

    手術療法

    内視鏡を用いて鼻の中で鼻中隔矯正術、下鼻甲介手術、後鼻神経切断術を行います。ダニや花粉などの抗原回避や様々な薬物療法を行っても症状が改善しない重症のアレルギー性鼻炎の方や、副作用で薬が使用できない場合に、手術を行います。手術はアレルギー性鼻炎の体質を治癒させる治療ではありませんが、手術後早期から症状を改善させることがわかっています。

    (詳しく知りたい方は「アレルギー性鼻炎・鼻づまりに対する日帰り手術」をご参照ください)

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