好酸球性副鼻腔炎

  • #専門とする疾患
    • においがわからない
    • 花粉症の時期が終わったのに、鼻づまりが治らない
    • いつも喉に痰がおりてきて、咳がでる
    • 餅のような粘度の高い黄色い鼻水がでる
    • 痛み止めを飲んだら、喘息発作がでた

    このような症状でお困りの場合は、好酸球性副鼻腔炎の可能性があります。
    一度、耳鼻咽喉科で詳しく調べることをお薦めします。

    疫学

    好酸球性副鼻腔炎は、近年増加している慢性的なアレルギー性疾患の一つであり、特に成人の方に多く見られます。この病気は、鼻腔と副鼻腔における白血球の一種である好酸球の過剰な蓄積が特徴で、治りづらい鼻づまりや嗅覚障害などの症状を引き起こします。
    以前は、細菌と戦う好中球がたくさん存在するタイプの慢性副鼻腔炎が主流でしたが、2000年頃から鼻茸がたくさんできるタイプの慢性副鼻腔炎が目立つようになってきました。鼻茸を顕微鏡で詳しく調べると、その中に好酸球がたくさん認められ、好酸球性副鼻腔炎と名づけられました。
    喘息の治療が経口ステロイド薬から吸入ステロイド薬に移行した時期と好酸球性副鼻腔炎が増加した時期がちょうど1990年頃で一致しているため、経口ステロイド薬で好酸球性副鼻腔炎が抑えられていたため、この疾患が目立たなかった可能性も指摘されています。
    日本では慢性副鼻腔炎をもつ患者さんがおよそ100万~200万人おり、その中で鼻茸をもつ慢性副鼻腔炎患者が10万人、そのうち好酸球性副鼻腔炎の中等症・重症患者は約2万人と推定されています。2015年に好酸球性副鼻腔炎が難病に指定され、好酸球性副鼻腔炎の難病の登録者数の推移をみると、患者数は年々増加し、2022年には22,340人となり2万人を超えました。その中でも東京都の登録者数は、最多の2748名で12.3%、埼玉県は1150名と5.1%に上ります。

    これまでに鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎は、欧米で発症が多いとされていましたが、最近、東アジアでも増加傾向にあります。その理由は完全には解明されていませんが、環境、生活習慣の変化、アレルゲンへの曝露の増加などで関連していると考えられています。(副鼻腔炎の原因について詳しく知りたい方は「副鼻腔炎のメカニズム」をご参照ください)

    好酸球性副鼻腔炎の症状

    好酸球性副鼻腔炎の主な症状は、嗅覚障害、餅のように粘度の高いにかわ状の鼻水、鼻閉などがあり、成人以降に発症することがほとんどです。
    また、喘息や痛み止めで喘息発作がでてしまう方が多いことがわかっています。鼻水や鼻水がのどに垂れてくるなどの症状が数年続いた後に喘息を発症するパターンが多いことが新たにわかってきました(Allergy. 2023 )。図に従来型の慢性副鼻腔炎と好酸球性副鼻腔炎の特徴をまとめました。

    2024年に発行された最新のガイドライン「鼻副鼻腔炎診療の手引き」では、副鼻腔炎の炎症は副鼻腔だけでなく、鼻腔でも炎症が生じているため、学術的には「好酸球性鼻副鼻腔炎」という名称に変わりました。

    好酸球性副鼻腔炎の検査と診断

    問診

    どのような症状があるのか、どの症状が最もつらいかなど、日常生活にどのように支障をきたしているか、いつ頃から症状が出現しているかなどを詳しくお聞きします。また、咳や喘息をはじめとした持病について詳しく伺います。

    内視鏡検査

    内視鏡を鼻の中に挿入し、鼻腔の状態を観察します。内視鏡は細いため、検査による痛みはほとんどありません。鼻腔の構造や鼻茸などの病変があるか、においを感じるための空気の通り道があるかどうか調べます。

    副鼻腔CT検査

    鼻腔の構造や副鼻腔の状態の確認を行います。内視鏡検査で観察することのできない副鼻腔の粘膜の腫脹、鼻茸や膿の貯留があるかなどの状態を把握することができます。

    嗅覚検査

    においの感じ方が弱い場合には、基準嗅力検査と静脈性嗅覚検査を行い、嗅覚の状態を評価します。

    血液検査

    白血球の一種である好酸球の比率やアレルギー性鼻炎の合併があるかどうか確認します。好酸球性副鼻腔炎の診断に役立ちます。

    組織検査

    診断基準の両側性、鼻茸あり、CTや末梢血好酸球の比率をスコアリングし、好酸球性副鼻腔炎疑いとなった上で、鼻茸や病変を生検することで、好酸球性副鼻腔炎であるかどうかを確定診断します。好酸球性副鼻腔炎を疑う場合であれば、好酸球の数や好酸球が多く集まる部位に生じる細長い結晶(シャルコーライデン結晶)の有無を調べます。診断や再発のしやすさの判定に役立ちます。

    下気道検査

    下気道とは、声帯より下の気管、肺のことをいいます。喘息は下気道の代表的な病気で、好酸球性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎に合併の多い疾患です。喘息を疑う場合には、下気道の状態を調べるために呼吸機能検査、呼気NO検査、モストグラフを行います。呼吸器内科による診察も行います。

    好酸球性副鼻腔炎の治療

    好酸球性副鼻腔炎の治療法には、薬物療法、手術療法、生物学的製剤があります。

    薬物療法

    鼻噴霧用ステロイド薬と経口ステロイド薬が中心になります。また必要に応じてマクロライド薬が用いられます。
    鼻噴霧用ステロイド薬は小さい鼻茸には効果がありますが、大きな鼻茸には効果が乏しいです。経口ステロイド薬は即効性がありますが、さまざまな副作用の観点から短期間での使用が推奨されています。最新のガイドラインには、喘息を伴う好酸球性副鼻腔炎には、吸入ステロイド薬を口から吸って鼻から出すという経鼻呼出療法が掲載されました。院長は学会で経鼻呼出療法についても発表しています。特に、手術後の患者さんに効果を発揮します。

    手術療法

    内視鏡下鼻副鼻腔手術を行います。この手術の目的は、鼻茸や炎症している粘膜と取り除くことと、8つほどの小さい部屋に分かれている副鼻腔を1つの大きな部屋にリフォームします(単洞化といいます)。
    当院では、患者様に術中の痛みや不安を感じさせないように全身麻酔下で手術を行います。最新のナビゲーションシステムやマイクロデブリッターを使用し、大学病院などの医育機関での手術の指導資格である鼻科手術指導医をもつ院長による手術を行います。
    手術の目的は、副鼻腔の通気と排液を改善することで、炎症を抑え、症状を軽減させることです。手術により、副鼻腔の出入り口を広げることで、手術後に使用する鼻噴霧用ステロイド薬や吸入ステロイド薬が副鼻腔内に届きやすくなり、効果的な治療が期待できます。

    院長の内視鏡下鼻副鼻腔手術の様子(アレルギー誌.2023より)

    生物学的製剤

    再発した場合や他のご病気で手術ができない場合には、デュピクセントを2週間に1度注射を行います。
    デュピクセントはサイトカインIL-4、IL-13をブロックすることで鼻茸を作り出すのに関わる好酸球が鼻腔に到達するのを抑制したり、鼻茸を溶かす方向にメカニズムを働きかけ、鼻茸を縮小させます。重症の喘息やアトピー性皮膚炎の方にも使用が可能なお薬です。
    院長が報告した論文では、9割弱の方(331名のうち283名)がご自身で注射をすることができますので(Patient Preference and Adherence. 2023)、注射の指導が終わり次第ご自宅で注射をすることができるため、定期的に2週間ごとに通院する必要はありません。

    まとめ

    好酸球性副鼻腔炎は、症状が持続する難治性の副鼻腔炎であり、適切な治療を受けることで症状の改善が期待できます。特に内視鏡下鼻副鼻腔手術は病状コントロールの重要な手段となっています。好酸球性副鼻腔炎は6年間でおよそ半数が再発するとされていましたが、生物学的製剤の開発のおかげで、そのような患者様も病状を抑えることができるようになってきました。

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