鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対する生物学的製剤の比較

2024.10.02

イントロダクション

慢性副鼻腔炎において、鼻茸(ポリープ)を伴う場合、治療は複雑であり、従来の治療法では改善が難しいケースもあります。2020年からデュピルマブ(デュピクセント)が、2024年よりメポリズマブ(ヌーカラ)といった生物学的製剤が、この疾患の治療に効果を示しており、多くの注目を集めています。デュピクセントとヌーカラは、気管支喘息の治療ですでに使用されており、その有効性が高く評価されています。

研究の背景と目的

デュピルマブとメポリズマブは、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の治療において有効性が示されていますが、これまで両者を直接比較したランダム化対照試験の結果はありません。そこで、この研究では間接比較を行い、両者の有効性と安全性を評価しました。特に、鼻茸スコアや嗅覚障害などの症状改善に注目しています。

研究の方法

この研究では、系統的文献レビューを実施し、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対する生物学的製剤のランダム化対照試験を特定し、デュピルマブに対して行われたSINUS-24/-52試験とメポリズマブのSYNAPSE試験を用いて治療効果を比較しました。主な評価指標として、鼻茸スコア、鼻閉、嗅覚喪失、視覚的アナログスコア(VAS)、および嗅覚検査SNOT-22を使用し、二値レスポンダー分析も行いました。

結果

SINUS-24/-52試験とSYNAPSE試験の結果をもとに分析が行われました。24週目では、デュピルマブはメポリズマブに比べ、鼻茸スコアの改善が有意に大きく、52週目には嗅覚や鼻閉、全体的な生活の質においてもデュピルマブの効果が優れていることが確認されました。また、全身性コルチコステロイドの使用がデュピルマブ群で大幅に減少し、手術の必要性もデュピルマブで低下しました。

考察

この研究は、デュピルマブがメポリズマブと比較して、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の治療において、より優れた治療効果を持つことを示唆しています。特に、鼻ポリープの縮小や嗅覚障害の改善、コルチコステロイドの使用減少など、患者にとって重要な臨床的改善が確認されました。これらの結果から、デュピルマブは鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎治療において、さらなる治療の選択肢として期待されています。

おわりに

耳鼻科医が使用可能な生物学的製剤が増えたことは朗報です。鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に合併の多い喘息の状態をみながら、デュピルマブとメポリズマブを切り替えることなど今後の治療方針の幅が広がります。

引用文献はこちらです。J Allergy Clin Immunol Pract.2024
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39326524/

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